
空き家を持ち続けている人が挙げる理由の第2位は、「解体費用をかけたくない」47.3%です(国土交通省 令和6年空き家所有者実態調査)。
多くの市区町村に、老朽化した空き家の解体費用を補助する制度があります。ただし金額も条件も市区町村ごとにまったく違います。そして、知らずに動くと受けられなくなる決まりがあります。
このページでは、どの市区町村にも共通する仕組みと注意点をまとめています。金額や期限はお住まいの市区町村のページでご確認ください。
先に知っておくこと
- 「空き家なら誰でももらえる」ではありません。市の危険度判定か、耐震診断の評点が条件になります。まだ住める家は対象外です。
- 工事を先に契約すると、もらえません。着工前の申請が必要です。業者発注する前に、まず市区町村にご相談ください。
- 予算に達した時点で受付が終わります。年度の途中でも締め切られます。
向いている場合
- もう人が住める状態ではなく、傷みが進んでいる
- 昭和56年5月31日以前に建てられた建物である
- 更地にしたあとの使い道が決まっている
- 近隣への迷惑や、倒壊の心配が現実的にある
向いていない場合
- まだ人が住める
(危険度の判定に通らず、補助は出ません) - 建て替えを前提にしている
(対象外の市区町村があります) - 更地にしたあとが決まっていない
(固定資産税が上がります)
補助額は「補助率 × 上限額」で決まります
ほとんどの制度は、この2つの数字で決まります。
- 補助率 工事費の何割を補助するか。2分の1か3分の1が一般的です
- 上限額 いくらまで出るか。工事費がいくら高くても、ここで止まります
たとえば補助率2分の1・上限50万円なら、工事費100万円で上限に届きます。それ以上工事費がかかっても、補助額は50万円のままです。
計算方法が2種類あります
ここが分かりにくいところです。同じ「補助率2分の1」でも、何に対して2分の1なのかが市区町村で違います。
| 工事費に直接かける | 業者との契約金額 × 補助率。分かりやすい方式です |
| 市の基準額と比べる | 「工事費」と「市が定める基準額(単価×延床面積)」を比べ、低いほうに補助率をかけます |
後者の場合、見積額が高くても補助額は増えません。延床面積で上限が決まってしまうためです。どちらの方式かは、市区町村のページに計算例を載せています。
対象になるのは「もう住めない家」です
この制度は、危険な空き家をなくすためのものです。だから建物が傷んでいることが条件になります。よくある要件は次のとおりです。
- 昭和56年5月31日以前に建てられた建物であること(旧耐震基準)
- 市区町村の危険度の判定を受け、基準を満たすこと
- 「市場での流通が困難」と判断されること
- 個人が所有する住宅であること(法人や自治体の所有は対象外が一般的)
判定は申請とは別の手続きで、先に受けるのが一般的です。判定に通らなければ補助額は0円です。まだ人が住める状態の家は対象になりません。
建て替えのための解体は、対象外のことがあります
「危険な空き家をなくす」ための制度なので、建て替えを前提とした解体を明確に除外している市区町村があります。公式ページに書かれていない場合もあるため、建て替えを考えているなら、申請の前に担当課へ確認してください。
補助の対象にならない費用があります
見落としやすいのが家財の処分費です。多くの制度で「家財道具の処分費等を除く」と定められています。
実家を解体するとき、家の中のものは自分で片づけることになります。補助金を使っても、この費用は自己負担です。
業者を自由に選べないことがあります
「市内の業者に発注すること」を条件にしている市区町村があります。福岡県で調べた55市町村のうち17市町村が該当しました。安い業者を見つけても、条件から外れると補助を受けられません。
「相続した空き家は対象外」の制度があります
解体の補助金には、大きく2つの出どころがあります。ひとつは空き家対策の制度、もうひとつは住宅の耐震化の制度です。この2つは、条件がまったく違います。
耐震化の制度にある解体補助は、「建替え等に伴う除却」という名前で入っています。古い家を壊して、地震に強い家に住み替えるための制度です。そのため「現に居住していること」が条件に入っていることがあります。空き家になった実家では使えません。
福岡県で解体補助金を確認できた55市町村を調べたところ、7市町村がこの条件つきでした。しかも、県内で2番目に上限額が高い町(90万円)もこれに該当します。金額の大きさと、相続した空き家に使えるかどうかは、まったく別の話です。
逆に、相続した空き家をはっきり対象にしている市町村もあります。「相続開始日から3年以内」といった期限つきで対象に含めているところ、相続した場合だけ住み替えの条件を外しているところなど、書き方はさまざまです。担当課には「相続した空き家で、今は誰も住んでいませんが対象になりますか」と、そのまま聞いてください。
もうひとつ。制度の名前に「空き家」も「解体」も入っていないことがあります。「木造戸建て住宅性能向上改修補助金」のような名前だと、「空き家 解体 補助金」で検索しても出てきません。空き家の担当課だけでなく、耐震化の担当課にも聞いてください。
見積もりは、市に相談したあとで取ります
ここまでの条件を満たしていそうなら、次は見積もりです。順番はどの市区町村もだいたい同じです。
事前相談 → 危険度の判定 → 見積もり → 申請 → 交付決定 → 着工
補助金の申請には見積書が必要になります。見積もりを取ること自体が申請の一部だと考えてください。ただし順番を飛ばして先に契約すると、補助は受けられません。まず市区町村に相談してください。
同じ家でも、業者によって金額が変わります
解体費用は建物の構造、前面道路の広さ、隣家との距離、廃材の量で変わります。同じ家でも業者によって数十万円の差が出ることがあります。
補助率が2分の1の市区町村なら、見積額が下がればそのぶん自己負担も下がります。「市の基準額と比べて低いほう」に掛ける方式の市区町村では、見積額が基準額を上回っているあいだは、値下げできたぶんがそのまま自己負担の軽減になります。どちらにしても、複数社から見積もりを取る意味があります。
解体無料見積ガイド
全国の解体業者が登録している一括見積もりサービスです。申込内容に合う業者を最大3社まで選んで紹介します。登録業者は13の審査基準を通った事業者のみで、業者とのやりとりは担当アドバイザーが窓口になります。利用は無料です。
※補助金の対象になるかどうかは、お住まいの市区町村が判断します。見積もりを取っても補助が確定するものではありません。
壊した後、土地の固定資産税が上がります
建物が建っている土地には住宅用地の特例があり、固定資産税が軽減されます。更地にすると、この特例が外れます。
売れるまでの期間が長引くほど、この差が効いてきます。解体の前に、その後どうするかの見通しを立てておくほうが安全です。更地のまま売るのか、駐車場などで活用するのか、持ち続けるのか。
実際に55市町村を調べて分かったこと
福岡県で解体補助金を確認できた55市町村について、各自治体の公式ページと交付要綱を直接調べました(2026年8月時点)。
| 相続した空き家に使えるか | 使えるのは46市町村。使えない7市町村はすべて「現に居住していること」が条件 |
| 上限額 | 20万円 〜 100万円。最も多いのは50万円(25市町村)、次に30万円(20市町村) |
| 補助率 | 2分の1が34市町村、23%が14市町村、3分の1が4市町村、60%が1市 |
| 計算方法 | 工事費に直接かけるのが34市町村、基準額と比べて低いほうにかけるのが24市町村 |
| 危険度の判定 | 55市町村のうち28市町村にあり(残りは耐震診断の評点が条件) |
| 予算枠の明記 | 37市町村が「予算に達し次第終了」と明記 |
| 市内・町内業者の指定 | 16市町村 |
上限額に4倍以上の開きがあります。そして、いちばん差が出たのは金額ではなく相続した空き家に使えるかどうかでした。上限額が最も高い町(90万円)にも「現に居住していること」の条件がついていました。金額の大きさと、使えるかどうかは別の話です。
※ 3市町村は金額を確認できなかったため、金額の集計は48市町村分です。福岡県以外の傾向を示すものではありません。
よくある質問
補助率2分の1・上限50万円なら、いくらもらえますか?
工事費100万円で上限の50万円に届き、それ以上かかっても補助額は50万円のままです。ただし「何に対して2分の1か」が市区町村で違います。業者との契約金額に直接かける方式と、市が定める基準額(単価×延床面積)と比べて低いほうにかける方式があり、後者は見積額が高くても補助額は増えません。
建て替えのために壊す場合も使えますか?
対象外にしている市区町村があります。この制度は危険な空き家をなくすためのものだからです。公式ページに書かれていない場合もあるため、建て替えを考えているなら、申請の前に担当課へ確認してください。
家の中の家財の処分費も、補助されますか?
多くの制度で「家財道具の処分費等を除く」と定められています。補助金を使っても、この費用は自己負担です。実家を解体するとき、家の中のものは自分で片づけることになります。
年度の途中でも、締め切られますか?
締め切られます。福岡県で解体補助金を確認できた55市町村のうち、37市町村が「予算に達し次第終了」と明記していました。また「市内の業者に発注すること」を条件にしている市区町村が17市町村ありました。
お住まいの市区町村を調べる
金額・条件・申請期限・必要書類は市区町村ごとに違います。補助額を試算できるシミュレーターも、対応している市区町村のページに用意しています。
地域から探す 補助金の金額・条件・申請期限と、補助額のシミュレーターほかの選択肢も見る
実家をどうするかは、4つのうちから選ぶことになります。比べたうえで決めてください。
1売る
相続で取得した人の21.7%が選ぶ、最も多い道。仲介と買取で進み方が変わります。
3貸す・活用する
空き家バンクと改修の補助金。売りたい人にも登録の意味があります。
4何もしない
32.7%が選ぶ最も多い状態。かかる費用と、税の軽減が外れる条件を整理しました。
このページは、どの市区町村にも共通する仕組みをまとめたものです。制度は年度ごとに変わり、予算に達した時点で受付を終了するものもあります。申請の前に必ずお住まいの市区町村の公式ページでご確認ください。
